My Stroke Of Insight

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NHKでジル・ボルティ・テイラー博士が脳卒中で 言葉を失って8年、再生を果たした彼女の軌跡を追った 「復活した”脳の力”~テイラー博士からのメッセージ~」をみました。
テイラー博士は人体解剖学、神経解剖学、組織学を究めて、ハーバード医学校の神経科学部門と精神医学部門で統合失調症に関する研究をし、構造神経科学研究所で仕事をしていました。
順風満帆なテイラー博士が、なんと脳卒中に倒れてしまいます。言語や論理をつかさどる左脳が出欠し脳卒中になりました。
左脳の機能が失われ、言語を発することができず、「119」のダイヤルもできなくなりました。
しかし、そこから生への執念を出しました。薄れる意識の中、机の中の名刺を取り出たが、文字は点にしか見えなかった。でも、数字が形として見えた。それで、電話のボタンをその形通りに押した。電話に出たのは同僚の男性でした。発したのは、うなり声だけだったという。
病院に担ぎ込まれ、手術により一命をとりとめました。しかし、損傷した脳は、左半球、言語や記憶や計算を司る左脳だった。 手術の後は何もできない赤ん坊の状態だったそうです。
優秀な脳科学者が脳卒中に見舞われるというこの稀に見る悲劇ですが、テイラー博士は「脳卒中から生還したのはすばらしいこと。生きていることはすばらしいこと。」と前向きに捉えていました。
脳の神経細胞は原則として再生しないそうで、失われた神経細胞は元に戻らしい。また、一般に、脳のリハビリは、6ヵ月が限度らしい。
しかし、母親と8年をかけて懸命のリハビリに励み、残された神経細胞を訓練し、テイラー博士は、ほぼ脳卒中以前の生活ができるところまで回復した。
脳は驚くほど柔軟だ。それを脳の「可塑性」と呼ぶらしい。
復帰後のテイラー博士の左脳は機能が低下し、右脳の機能が目立つようになりました。
何が変わったのだろう?
言語機能が失われ、物事を論理的に筋道だって考えることができなくなる。他人の言っていることが理解できない。身体の境界がわからなくなり、周囲と一体となり、まるで「流れる」ような感覚に陥る。
 
つまり、空間の感覚が消えてしまう。また、過去・現在・未来という直線的な時間もなくなり、あるのは「今」だけ。
右脳は、直感や芸術、感触を司る。
 
左脳の働きが弱くなったテイラー博士は、とてもポジティブな精神状態で、生きていることに喜びを感じた。 悩みも忌まわしいことも全て無くなり「涅槃」のよ うな状態だったという。言葉が分からないので、人を視覚や表情で判断するようになった。
以前から習っていたステンドグラスの芸術性の大きな高まり。自然と一帯になり、穏やかでノンビリとした自分でいることの心地よさ。
左脳はスピードを求めるが、すぐに穏やかな自分に戻りたくなるのだという。右脳の感覚を研ぎ澄ませれば、前向きな思考になり、平和的で穏やかな気持ちになる。
ジル・ボルティ・テイラー 博士の著書は、30カ国語に翻訳。脳の疾病者だけでなく、多くの人々から反響が寄せられている。彼女のリハビリは、同じ病気を抱える多くの患者さんに勇気を与えた。 
久々に感動する科学の話に触れた気がした。

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